ごめんね

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今思い返してみれば、あの詩はまさに今の自分たちじゃないかって。 気付いたときには、すでに壊れちゃってて。 取り戻せなくて、取り戻せないからこそもうそれでいいんじゃないかって。 あたし、もうダメなんだって。 「……はぁ」 薄暗い部屋に、溜め息が溶け込む。 返事のメールを打って、目を閉じる。 このメールを送ったら、全てを終わりにしようかと。 決心して、目を開く。 『んぢゃ、そういうことで。ユイのこと、大好きだったよ』 嘘のない、本気の言葉。 送信ボタンを押すのに躊躇いはなかった。 送信しました、という素っ気ない文字が浮かぶ画面を無心で見つめていた。 窓の隙間から流れ込む風は、冷めきったあたしの身体の横を通過する。 静かな部屋に響くのは、パソコンのスピーカーから流れる恋愛ソング。 好きだと伝えられずに終わったとある少女の物語。 伝えられたって、結局は壊れてしまうのに。
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