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風が冷たくなって来た。
小さく身を震わせて日暮れが近い事に気付き、マリオンは家に帰ろうと荷物の置いてある木の根元に向かった。
その木はマリオンが生まれるずっと前から村はずれに生えていて、太い幹がどっしりとした安心感を見る者に与える。
マリオンはこの木が大好きだ。
いつもの様に荷物を取ってから、木の幹に掌を添える。
暖かさと木の生命力を感じる。
けれど今日は普段と違っていた。
常の安定した気ではなく、ざわめきが感じられた。
「何だ?」
眉を潜めて、マリオンは更に木に身を寄せる。
そっと意識を集中させて、木の持つイメージを自らの中に取り込む。
―――マリオンは幼い頃から植物と意思の疎通が出来た。
村の人は、否。両親でさえも。
マリオンのこの能力を気味悪がった為に、今では自身の能力については口外していない。
だからこそ、未だにマリオンはこの村に住めているのだ。
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