薔薇の刺。

4/8
前へ
/20ページ
次へ
そうして年月が経てば、村人達はマリオンの能力を忘れた。 理解出来ない事象を、存在しなかった事にされたのだ。 じわじわと木からイメージが送られて来る。 村の北東にある森、その奥にある巨大な岩―――村人達がクマ岩と呼ぶ物が見えた。 そして唐突にイメージが切り替わる。 先程までの連続したものとは違い、断片的なそれ。 ブラックベリーの茂み、赤い布。 青白く血色を失った細い手。 金色の髪が土に汚れている。 これは…、これは一体何なのだろうか。 ただマリオンには、木がその場所に向かえと急かしているのが分かった。 「あそこに行けば良いのか…」 幸いにして、まだ日没まで時間がある。 日の出ている内なら、それ程危険な事も無いだろう。 マリオンは北東の森へと歩を進めた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加