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森の中は木々が太陽の日差しを遮り、ひんやりとしている。
村にも近く危険の少ない森だ。
日頃から多くの村人が出入りし、生活の糧を得ている。
その為、足下がしっかりと踏み固められている。
マリオンが目的地にたどり着くまで、そう長くはかからなかった。
「この辺りだよな」
見渡しても静かなもので、異常は見受けられない。
心地よい風が吹いている。
けれどあの木が偽りを教えたとは思えない。
否、純粋な植物に偽りなどない。
少なくとも、マリオンの知っている植物はそうだった。
ひょいと小首を傾げて、マリオンは周囲で1番大きな木に向かって歩を進めた。
歩を進めると、それまで茂みに隠れていたものが見えた。
まず森の中に不釣り合いな、高いヒールの靴を履いた足。
それが赤いドレスの裾から伸びている。
「…おい、大丈夫か?」
木が見せた断片的なイメージ通りの女性が倒れていた。
「………っ!」
彼女の顔が見える位置まで来て、マリオンは息を呑んだ。
美しい。
金髪に青白い顔がまるで精巧な人形を思わせる。
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