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恐る恐る手を伸ばして触れた。
微かな温もりは確かに彼女が生きている事を示している。
あまりにも儚い彼女の存在が消えてしまう事を恐れて、マリオンはそっと彼女を自分の家へと連れ帰った。
それから1週間。
女性は無事に目を覚まし、リーシャと名乗った。
順調に体調も回復し、時にマリオンの畑仕事すら手伝うようになった。
けれど彼女は頑として、自らがあの場所に倒れていた理由を語ろうとしない。
またリーシャは畑仕事にも慣れていなかった。
何か深い事情があるのだろう。
そうでもなければ、良家の子女である彼女がこんな場所にいつまでも留まる筈が無いのだから。
未だに何処か危なっかしい手つきで農具を操る彼女を横目に、マリオンは密かに今後を危惧した。
マリオンの危惧に反して、それから暫くは平穏に日々が過ぎた。
だから油断していたのかも知れない。
ここに居れば安全なのだと、高をくくっていた。
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