薔薇の刺。

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しっかりとした口調ながら、一言喋るごとに、顔色が悪化していく。 死に逝く友を見送るのが、これほど辛いものだとは思わなかった。 零れ落ちる涙を拭って、マリオンはリーシャのその笑顔を脳裏に焼き付けようとした。 「マリオン、何も聞かずにここに住ませてくれてありがとう。わたし、貴方の事とっても大好きだったわ」 「リーシャ、俺もだよ。俺もリーシャの事大好きだ」 「わたし達、似てるわね。ねぇマリオン、わたしの半身」 頼みがあるの。 そうして、彼女は静かに息を引き取った。 大切な半身の最後の願いを叶える為に。 マリオンはそれまでの生活を捨てた。 家を捨て、村を捨て。 名を捨てて容姿すらも変えて。 時には偽りの恋人や家族を作って。 こうして、美しき情報屋マリアが誕生した。 『彼女』が何の為に活動しているのか、それは『彼女』とリーシャだけが知っている。
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