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あれはまだ、リアスが物心ついたばかりの頃。
普段は礼儀作法や勉学など、貴族としての心得に厳しい母が、珍しく外出していた。
伯爵である父と共に、パーティーへと招かれたのだ。
幼いリアスにとって母は優しい甘える相手ではなかった。
だから寂しさよりも嬉しさが先立って、1人庭に出て遊んでいた。
…後妻である母を恐れて、使用人達は近寄って来ないから。
良く晴れた青空は美しく、子供らしい玩具など与えられていないリアスの心も浮き立つ。
それでも帰宅した母に叱られるのは怖い。
服を汚さない様に、リアスは花を摘んだり庭を散策したりした。
今思い返せば、まるで少女の遊び。
けれどあの頃には、母に知られずに楽しむ唯一の良策に思えたのだ。
貴族の屋敷とあって、庭は美しく整えられていた。
本当はリアス個人に興味は無いくせに、体裁を気にする父の命で剪定された木々。
いかにも子煩悩な父親を思わせる、愛らしい動物型の木。
実際のところリアスがそれをまともに眺めたのは、あの日が最初だった。
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