226人が本棚に入れています
本棚に追加
薄暗い森の中にリアスの声だけが吸い込まれていく。
そのうちに以前聞いた恐ろしい話が次々に脳裏を過った。
迷い込んだ人間を喰らう吸血樹。
親切な振りをして騙し、生きながらに心の臓をくり抜く大男の木こり。
他にもたくさん知っている。
中には魔族の子供すら食べてしまう怪物も居た。
木の影や茂みの中から、今にも飛びかかって来るのではないか。
不安が想像に拍車をかけた。
「…ぅあーん、あーん…」
大きな声で泣いて、恐怖を紛らわせようとした。
次第に日も暮れ始め、闇がいっそう濃くなっていく。
「えーん、誰かぁ…」
寒さで小さな体は震え始めていた。
「…っ、ひっく」
泣きつかれて小さなしゃっくりをあげていた。
「ぅ…、わぁ!?」
そんな時に背後の茂みが大きな音を立てた。
お陰でしゃっくりこそ止まったけれど。
リアスは恐ろしさに硬直した。
最初のコメントを投稿しよう!