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あの頃は全く気付かなかったけれど、ぶっきらぼうなあれは、異母兄の優しさだったのだ。
けっきょく館に戻るまで会話も無く。
数年後まで異母兄に会わなかった。
再開したリアスは異母兄の事を忘れていて。
母に吹き込まれた人物像から彼を憎んでいた。
あの日、彼のお陰で母が帰宅する前に館に戻り、叱られずに済んだというのに。
リアスは恩を仇で返した事になる。
今まで忘れていたのに、夢によってよみがえった記憶は、苦い後悔を伴っていた。
それでも、思い出した今なら分かる。
あの日の異母兄の、不器用な優しさが。
冷えきった胸の中、ぽつりと小さく温かな物が宿った。
小さく微笑んで、リアスはあの日と同じ美しい空の下を歩き始めた。
End.
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