懐かしい記憶。

7/7
前へ
/20ページ
次へ
あの頃は全く気付かなかったけれど、ぶっきらぼうなあれは、異母兄の優しさだったのだ。 けっきょく館に戻るまで会話も無く。 数年後まで異母兄に会わなかった。 再開したリアスは異母兄の事を忘れていて。 母に吹き込まれた人物像から彼を憎んでいた。 あの日、彼のお陰で母が帰宅する前に館に戻り、叱られずに済んだというのに。 リアスは恩を仇で返した事になる。 今まで忘れていたのに、夢によってよみがえった記憶は、苦い後悔を伴っていた。 それでも、思い出した今なら分かる。 あの日の異母兄の、不器用な優しさが。 冷えきった胸の中、ぽつりと小さく温かな物が宿った。 小さく微笑んで、リアスはあの日と同じ美しい空の下を歩き始めた。 End.
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加