薔薇の刺。

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これはレン達と出会うよりも前のお話。 その年はいつもよりも気候が良くて、春に種まきをした作物もすくすくと育っていた。 初夏。 爽やかな風が心地良く吹く中、男達が畑仕事に精を出していた。 そんな中にマリオンが居た。 他の同年代の少年達に比べて小柄だったけれど、マリオンはその分すばしっこく、愛嬌があった。 「マリオン、今日も精が出るな」 近隣の人々に好かれる彼が畑仕事をしていると、様々な人が声をかけてくれる。 「まぁな。今年はどこも出来がいいし、きっと皆楽が出来る」 ニコリと笑うマリオンに、声をかけた男性も笑みを返した。 平和だった。 小さな村だが、皆仲が良い。 ここがマリオンの生まれ育った故郷。 自慢の村、畑、村人達。 手を休めたマリオンは、青い空を見上げて微笑んだ。 風に乗って、鳥達が空を飛んで行くのが見える。
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