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入学式
春の風が、少し肌寒い。
目の前にそびえ立つ桜並木の花びらが、風の強さに押されて散り、目の前にヒラヒラと舞ってくる。
春の温もりが心地良く、太陽が元気良く照らしていて、入学式日和に笑顔が浮かぶ。
それなのに、表情とは裏腹に心はうまく晴れてくれない。
ため息を1つ吐いて空を見上げると、毎日通っていた女子中学校が懐かしく思い出せる。
女の子ばかりの学校で、毎日過ごすのは楽しかったよ。
「おはよう、恋。今日から高校生になるわね!同じクラスなら良いのに」
声の方を見ると親友の、川崎透花(とうか)がいた。
中学の時のような幼さはなく、高校の新しい制服に身を包んでいる姿は、誰もが見惚れるくらいの美人さん。
もちろんあたしも例外なく、数秒間見惚れてしまってた。
立ちつくしたままのあたしの腕を取り、透花は入学式の話をしながら歩いていく。
そんな透花に引っ張られながら桜並木を見つめる。
空が青い。
絶好の入学式日和とは、このような空を言うんだと思った。
気付くと、希望と期待に満ちた姿で透花が楽しそうに歩いている姿が、あたしも微笑ましく感じた。
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