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そんなこんなで、しっかり者の透花の後ろをあたしはボーと歩いていた。
同じ制服を着た男女が、仲良く話ながら登校している。
きっと、栗山中学出身なんだろう。
あたしと透花の通っていた百合学園は私立の女子校で、エスカレーター式のお嬢様学校。
栗山中学は普通の市立の中学で、男女共学なんだよね。
だから男女知り合いが居てもおかしなことは1つもないの。
でもあたしは、そんな光景に生唾をゴクリと飲み込んでしまう。
自分でも気付かないうちに、段々透花との距離ができるくらい足取りが重くなってくる。
ドンッ
突然視界に壁が出来たと思うと、あたしは弾かれるかのように地面へ尻餅を付く。
「恋ッ!!!」
透花の声がしたと思うと急いで走り寄ってくるのが分かる。
周りの注目を浴びていると思うと、体が火照ってくる。
心配してくれている透花に笑顔を向けようとして、地面から透花の方へ顔を向ける。
ドクン…
心臓が脈打つ。
「ごめんね?君、大丈夫?」
あたしは自分の目の前に立つ壁の声に、更に心臓が脈打つのを感じていた。
「あら?貴方、優弥じゃないの。恋にぶつかったのって貴方?」
透花は、恋の近くに居た男に話し掛けている。
「いや、俺じゃなくて柔道部の先輩―…」
優弥と呼ばれた男が透花に説明しているが、あたしにはもう何も聞こえない。
早くなる鼓動と、震える体を押さえることで精一杯だった。
ぶつかった男があたしに向かって、手を伸ばして来たのが合図になった。
男…
オ ト コ …
怖い怖い怖い怖い怖い。
「いやぁぁぁあああ!」
あたしはわけも分からず叫びながら、学校とは真逆の道を走り出していた。
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