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ガラガラガラ……と教室の扉が開き、若い新任のような男の教師と、前髪をまっすぐ揃えた中学生のような少女が入ってくる。 教室が、2人に注目して静かになる。 「お前ら早く席に付け! チャイムは鳴り終えてんぞ!」 若い男……このクラスの担任である、城崎啓真が生徒たちに注意する。 横にいる転校生が年齢以上に幼く見えることもあり、女子生徒にモテるほど整った顔が、今は悪戯を叱るお兄さんのように生き生きとしている。 通常でもお兄さんみたいな存在である城崎は、男女問わず生徒から人気のある教師だ。 城崎は全員が席に着いたのを確認してから、一呼吸をおいて言葉を紡ぐ。 いきなり静かになった教室に緊張したのか、隣の少女は固まって下を向いてしまっている。 「もう知ってる人も多いと思うが、俺らのクラスに今日付けで転校生が入る」 俯いている転校生に、城崎は挨拶するように促した。 彼女は漸く気づいたように顔を赤く染めつつ、前を見て緊張した風な小さな言葉を発する。 「お……大野七海です……。よ、よろしくお願いします……」
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