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か細い声で、震えながらの言葉。 緊張からか、言い終えたからかすでに彼女はうつむいている。 教室全体がしんと静まり返っている。 「お前ら、なんでこんなに静かなんだ? と、まぁ大野の席は、大西の後ろが空いてるからそこでいいか?」 城崎が、静まり返った教室全体を見渡して、雰囲気を変えるように言う。 その言葉に反応して、教室の中の生徒全体の視線が蒼子に向いた。 蒼子は、急に出た自分の名前と向けられる視線に驚きつつ、城崎に頷いた。 蒼子の席は、空白となっている一番後ろの席から一つ前の席であり、蒼子の隣に座るのは綾瀬だ。 そんな綾瀬は、傍観者のように楽しそうに蒼子を見ている。 転校生である彼女は、顔を赤くしつつ俯きながら、蒼子の方へ歩いてきた。 揃えられた彼女の横髪が、小さく揺れる。
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