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「よ……よろしくお願いします……」 緊張しきったような、消えいりそうな声で蒼子に頭を下げる。 「こちらこそよろしくね」 少女に顔を上げるように示し、蒼子は低血圧で不機嫌気味な表情を、幾分か落ち着いた様子に見えるくらいにまで和らげようと努力した。 「次の一時間目は始業式で、全校集会だから早く体育館へ行け!」 城崎の注意ともいえる怒声で、クラスのしんとしていた雰囲気がまた騒がしくなる。 「行くわよ」 少女に荷物を置くように示して、蒼子は机の横に下げてある体育館シューズを入れた袋を持った。 彼女は恐々と蒼子を見つつ、転校してきたばかりのため、体育館シューズがないのか手持ちぶざのままあたりを見回した。 「体育館はこっちだから、私についてきて」 早足で蒼子が歩いて行くのに、彼女は遅れまいと追いかけるようについてきた。
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