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そんな笑顔の彼ににこりともしないまま、彼女は眠たさを隠さずに前を向き小さく欠伸をする。
化粧はせずとも凛として整った顔。
肩甲骨にかかるほどの髪を無造作に一つ括りにしており、斜に構えた表情。
世の中に退屈と絶望しか映し出していないかのような、不思議な色合いの瞳。
そんな彼女が身に纏うのは、この桜雪学院の制服である紺のブレザーに水色のブラウス、そして緑を基調とした赤と黄色のストライプが入る膝小僧が隠れるほどの長さのプリーツスカート。
運動していることを示すくらいには、多少引き締まった足には黒のハイソックスと上靴。
それが、この彼女……大西蒼子を象徴するものであった。
綾瀬はにこにこと、何かを聞きたそうに彼女を見つめている。
その視線に負けたのか蒼子は、綾瀬を気だるそうに睨み付ける。
校則で許されていないはずの……、しかしそんな彼と幼馴染であるゆえ見慣れてしまった金髪が、朝の日差しと粉雪に反射して、眩く輝いている。
彼は蒼子に問いかける。
「どっちなん?」
「……何が?」
大人びたような……、しかし退屈した子供のような不思議な声色が、彼に問い返す。
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