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主語も脈絡もなく急に問われた蒼子には、何の事だか理解ができていない。
「このクラスに転校生がくるって話やねんけど、それが男か女かって」
「くるのは女よ。……この騒ぎは転校生がくるからなのね」
転校生が来るなど全く知らなかった蒼子は、ようやくこの教室の騒がしさについて理解に至った。
高校生になっても、転校生というものは期待されるものらしく、蒼子の言葉にクラスの男子がさらに盛大に騒ぎ出す。
いつの間にか綾瀬も、180センチはある背が高く痩せた眼鏡の男友達と、転校生についての想像や期待の話をし始めていた。
「……迷惑なほど便利な力よね」
皮肉気味な彼女の台詞は、クラスの喧騒に書き消され、溶けて消えていった。
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