29人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は毎年、初霜が降りる。
通学路には土が見える所はあまりないけど、わざわざその場所を探して、ローファーの先で踏む。
足の裏に靴を通して伝わる尖った感触が好きだったりする。
(やばっ……予鈴?)
一人で笑みを浮かべながら、季節を楽しむあたしの愉しみをぶち壊す……現実的なメロディー。
機械に操られてる気がして、なんだか面白くない。 ケータイをスライドして時間を見れば案の定、予鈴だった。
慌ててナナメ掛けの鞄を押さえて走り出す。
(あたしの足なら、間に合うかもしれない)
すいすい横をすり抜けるチャリを睨みながら走る。
息を切らして校門を潜った途端に、本鈴が鳴った。
「珈南、ちこーく」
「うえっ、本条……センセイ」
「今のウエッてのは何だ? それに先生がつくのに間が空いたな?」
ニヤニヤしながら本条は、あたしの頭をバインダーの角で小突く。
(エロ保体教師! 年中ジャージ! ヒゲ面芝生頭!!)
心の中で叫びながらあたしは、本条を睨みあげる。
そんなあたしの視線をこれみよがしに流し、担任は昇降口に歩き去った。
最初のコメントを投稿しよう!