まらそん

　
その雑誌は私が中学の陸上部だったときに買ったもので、マラソンの話を書いていた。

『マラソンの法則を知っていますか？マラソンで辛くなった時、練習を思い出すんです。２０ｋｍ走ることの大変さを体験した人は、１０ｋｍを走る時に楽になります。一度辛い事を体験した場合、辛い事に耐える許容範囲が広くなるという事です。だから若いうちに苦労した方が、大人になったときに得しますよ。』
と書かれていた。その時、私の中で何かが切れた音がした。直ぐに支度をした私は浅巳の所に向かった。

そして部屋にあがり、浅巳の前に立つ。

「浅巳、今日はごめんね。」

「ううん。あたしの方こそごめん。」

浅巳は下を向き、頭を下げる。

「私、分かったんだよ。」

「……何？」

顔を上げる浅巳。私は持ってきた鞄から斧を取り出した。

「浅巳が辛いのは、許容範囲が狭いからなんだよ。」

思いきり斧を振り下ろした。