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ゴッ。と籠ったような音が部屋に鳴り響く。振り下ろした斧は浅巳の右肩をとらえていた。
「いやぁぁぁぁ!!」
浅巳は叫び、ベッドに仰向けに倒れる。斧は4cm程、肩に刺さっており、切り口からは鮮血が泡の様にブクブクと音を立てて流れ出てきた。
私は斧を一度抜き、再び振りかぶる。
「浅巳…マラソンの法則だよ♪」
思いきり振りおろした。ゴン。と今度は肉の切れる音ではなく、骨の削れる音がした。
浅巳の為。浅巳の為…。
「取れろ!取れろよ!」
ゴンッ。ザクッ。ザクッ。
何度も何度も斧を振り下ろした。
「はぁはぁはぁ…。」
数十回は振り下ろしただろう。右腕は完全に浅巳から離れていた。指が少しだけ動いている。…気味が悪い。やっぱり浅巳には悪魔が取り付いていたのか。
「浅巳…。今の痛み、忘れちゃヤダよ?」
「……。」
「……浅巳?」
ふと、机が目に入る。私は斧を捨て、机に向かった。
「……浅巳……」
そこには一枚の写真があった。中学で行った、修学旅行の時の写真だ。
真ん中に二人、私と浅巳が満面の笑顔で写っていた。
終
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