君の瞳の中に

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 七条は微笑みながら啓太の隣に腰を下ろした。 「伊藤君が目を覚ます前に戻ってくるつもりだったのですが、間に合いませんでしたね」  残念そうな七条の言葉にないがしろにされた訳じゃないのが分かった。  でも、変な勘違いをして勝手に拗ねた自分が恥ずかしくて、啓太は膝を抱えたまま顔を上げられなかった。 「伊藤君。  どうかしましたか?」  様子がおかしいので七条が聞くと、啓太はやっと顔を上げたが、その表情は泣く寸前に見えた。 「啓太、思う事があるなら言え。  …後悔してるのか?」  西園寺に言われ啓太はハッとした。  自分が誤解したように、自分の態度で西園寺にも誤解させてしまった。  このままじゃ自分の気持ちは全然伝わらない。  啓太は意を決して伝える事にした。 「後悔なんてするわけないです。  ただ、俺が起きた時2人共いませんでした。  だから、夢でも見たのかと思って不安になったし、事がすんだら俺なんてどうでもいいのかと悲しくなりました。  今は勘違いだったって分かってます。  だから恥ずかしくて…  出来たら、その、こういう時は、気付いた時、側にいてほしいです。  西園寺さんも七条さんも忙しいのは分かってます。  俺がわがままなだけですけど…」  言いたい事を言い終わった後で、わがままな恋人は嫌だと嫌われたらどうしようと不安になった。 「啓太。お前の言いたい事は分かった。  私達の配慮が足りなかったな」 「そうですね。  伊藤君には寂しい思いをさせてしまいました。  申し訳ありません。  これから愛し合った後、目が覚めた時君の瞳の中には僕か郁が必ずいますから」 2人に両方から抱き締められて、啓太は愛されている事を実感した。 「至らなかった僕達を許してくれますか?」  七条が顔を覗き込みながら聞いてきた。 「俺の方こそ、わがまま言ってごめんなさい」  嫌いにならないでと無意識で呟くと、西園寺が優しく微笑んだ。 「可愛い恋人の可愛いわがままを聞くのは当然だ」 「沢山言っていいんですよ。  恋人ですから」  2人から交互に言われ、甘やかされて喜んでいる自分に笑みがこぼれる。 「じゃあ、俺にも言って下さいね?  恋人なんだし」  啓太は喜びに満ち溢れた笑顔でそう言った。         終  
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