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その後
ふと目覚めた啓太は自分の状況をすぐには把握出来なかった。
視線を巡らせると、会計室のソファに横になっているのがわかり啓太の顔は見る間に赤くなる。
服を来ている事に安心しながらも、2人と付き合う事になり、その場で深い関係になってしまった事を思い出し恥ずかしくなった。
ソファの上で気怠い体を持て余しながら、初めてなのに随分と乱れてしまった自分を2人がどう思ったか気になる。
2人の反応を見ようにも部屋には人の気配がなく、啓太は不安になった。
自分が寝ているのに2人がいないのはなぜだろう?
胸が締め付けられるような痛みを感じた。
手に入れたと思った物が、指の間からこぼれていくような切なさを感じた。
体を起こすと鈍い痛みが走る。
2人を受け入れた事が夢ではなかったと啓太に告げる。
啓太はソファの上で膝を抱えた。
自分を捧げてしまえる程に2人が好きだと確信したのに、2人にとって自分はそれほど大事な存在ではなかったのだろうか?
一度手にしてしまえば、後はどうでもいいのだろうか?
嫌な考えが啓太の頭に駆け巡る。
1人残されて打ちひしがれていると、ノックの音がして扉が開き、西園寺が入ってきた。
「啓太、目が覚めたか?」
西園寺は啓太の頭をなでながら横に座る。
「どうした啓太。痛むか?
初めてなのに無理をさせ過ぎたな」
顔を上げない啓太を心配して前髪を払い隠れている顔を見ようとするが、啓太は小さく首を振った。
気遣う言葉も優しく触れる指先も、今のマイナス思考の啓太には受け入れられなかった。
「啓太・・?」
西園寺が呟くように名を呼んだ時、ノックと共に七条が部屋に入ってきた。
「おや、伊藤君。起きて大丈夫ですか?
無理しないで下さいね。
郁、お帰りなさい。
すみません。海野先生に呼ばれてしまい、席を外していました」
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