君の瞳の中に

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 そんな仕草が可愛くて、5人は益々迫っていく。 「・・・えっと、何を選ぶんですか?」  あまり近付かないでくれ・・と啓太は内心ビビりながら聞いた。 「俺達5人の内、誰と付き合うか選んで欲しい」  啓太は真剣な表情の5人を順番に見ながら、言われた言葉の意味を考えた。 (誰と付き合うか選ぶ?  って、どこかに行く。とかじゃない、よなぁ・・・) 「あの、俺、誰とも付き合うつもりないんですけど…」  上目使いに言う啓太を見て5人共が頬を染める。 「・・いや、この中から選んでもらう」 「無理です。付き合いません」  押し切れたらたまらないとキッパリ断る啓太だったが、5人は引き下がらなかった。  無言のまま睨み合うが、啓太は焦っていた。  このまま押し問答を続けてたら、いつ暴力に発展するか分からない。  力で来られたら相手は5人。啓太に勝目はない。  必死に頭をフル回転させるが、こんな事態に陥ったのは初めてで何も思い浮ばない。  助けを呼ぼうにもここは普段から人気がない。 (俺の運の良さもここまでか?)  怪我を覚悟するしかないかと諦めかけた時、救いの手が現われた。 「何をしている!?」  突然掛けられた問いに啓太を取り囲んでいた5人は一斉に振り返った。  啓太も目を見開いて立ちはだかる人の間から声の主を見つめる。 「西園寺さん、七条さん・・・」 「・・会計部」  啓太の呟きに驚きの声が被る。 「お前達は何をしている?  自分達の行動を良く考えて見ろ。恥ずかしいと思わないか?」  西園寺の冷ややかな視線と冷たい声に5人の体がピクリと震える。 「郁、この方達はご自分の事しか考えられないんですよ。  伊藤君がどんなに迷惑に思うかなんて、分かろうとしてないんですね」  淡々とした口調で語る七条の笑顔は目が笑っていなく、啓太は自分に向けられた訳ではないのに震えてしまった。 「違う!  俺達は伊藤に選んでもらってるだけだ」 「そうだ。誰と付き合うのか決めてもらうだけだ」  口々に自分達に非はないとまくし立てる。  自分達を正当化している5人を西園寺は視線一つで黙らせた。 「選択肢がなさ過ぎる。  何故お前達の中から選ばなくてはいけない?」
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