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そしてその日の夜、彼が屋上に来ると同時に大きな花火が舞い上がった。
「こっちこっち! もう始まってるよ!」
「バカ! 声が大きい! バレるだろ!?」
「大丈夫だよ。看護婦さん知ってるし……ここからが一番綺麗に見えるんだよね」
そう、この日は花火大会だったのだ。私からのプレゼント、気に入ってくれただろうか。
――私には、これぐらいしか出来ないから……。
「……来年も一緒に見ような」
「えっ……?」
花火を見ながら彼は言った。
……冗談だと思った。
私が死ぬことは分かっていたから……。でも彼は言った。
「来年も再来年も、ずっと一緒に見ような。約束だぞ?」
「…………」
彼の真剣な眼差し……。
私は何も言わずに頷いた。
花火の音と光が、私たちを優しく包んでくれていた。
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