『奇跡 ~その弐~』

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   実は私、あなたに秘密にしている事があります……。 「ママ! 看護師さん! こっちだよ! 早く早く!」 「そんなに急がなくても大丈夫よ」  それは……あなたに会いに来た事。  屋上に先に居たあなたは、騒がしくなったな、と思ったみたいだけど……。 「あっ、お兄ちゃんも花火、見に来たの?」 「あぁ、そうだよ」 「ここからが一番綺麗に見えるんだよ」 「えっ……」  あなたは驚いた顔を見せた。当たり前だ。私が以前、あなたに言った言葉……。あの顔は面白かったなぁ。 「すみません。うるさくしてしまって……」  母が申し訳なさそうに言った。 「いえ、こういうのは大勢で見る方が楽しいですから……」 「お兄ちゃん! もうすぐ始まるよ!」 「あっ、あぁ」  次の瞬間、大きな花火が舞い上がった。五年前と同じ綺麗な花火……。 「お兄ちゃん、お兄ちゃん」  私は小声であなたの服を引っ張った。 「これ、お兄ちゃんにあげる」  私があなたに渡したもの。  それは……あなたから貰った水晶だった。
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