『奇跡 ~その壱~』

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   二十歳の夏、私は彼と出会った。私が入院していた病院で……。  中学生だった彼は、私から見れば可愛い弟の様だった。彼はと言うと、私の事はうるさい姉ぐらいにしか思っていなかった……と思う。  ――いや、思おうとしていた……。  しかし、日を追う事に彼の想いは私に伝わって来た。  気付かない振りをするのは……限界だった。  だから、言った……。 「私……もうすぐ死ぬんだよね」 「……えっ?」  彼は冗談だと思ったみたいだった。  だって私、今までで一番明るく言ったから……。  しかし、日に日に痩せていく私を見て彼は確信した。  私は死んでしまうんだと……。  だから彼は最期のあの日、私に言ったんだと思う。 『待ってるから……』  彼と出会った事……  それが私にとっての奇跡だった。
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