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1つは昼間、
あれほどにぎやかだったのが、
夜になるとまったくの無人となり、
その差がはげしすぎるからだ。
昼間のにがわいが、
壁や天井にしみこんでいる。
それが夜になり、
何かの気配となって、
あたりに漂っているのだ。
そして、
もう1つの理由は、
音楽室、理科室、美術室、保健室などの
一種独特な空間のせいである。
しかも、
その空間の中には、
人体模型やホルマリンづけの標本、
古びたピアノ、
せっこうでできた人の顔など、
舞台効果を盛り上げる小道具が
たくさんあるからだ。
想像力ゆたかな子供たちは、
そこに大人では見えないものをみ、
聞き、感じ、さまざまな
こわい話を作り出すのだ。
そんなことを考えていると、
ふいに誰かの声が、
廊下の奥から聞こえたような気がした。
「気のせいだな…」
雨の音がますます激しくなり、
校舎の中に反響して、
ゴオーゴオー、
と聞こえている。
職員室にたどりつき、
電気をつけると、
なんとなくホッとした。
その時、
リリーン、リリーン、
目の前の黒電話が、
突然大きな音でなりだした。
田島は、腰を抜かすほどおどろき、
おもわず机にしがみついた。
リリーン、リリーン、
こんな夜ふけに、いったい誰だ。
田島は受話器に手を伸ばした。
その瞬間、
窓の外がオレンジ色に輝き、
同時に生木を裂くようなバリバリという
強烈な雷鳴がとどろいた。
雨音が激しくなり、
校舎が嵐の海に没していくような
錯覚を覚える。
「はい、○○○小学校ですが…」
田島の声はうわずっていた。
しかし、
電話の向こうからは声がしなかった。
ただ、
何か恐ろしい気配がした。
「もしもし!」
たまらず、田島は叫んだ。
すると…
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