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そう言った恭介の表情は真剣そのものだった。
とにかく、何かを企んでいるような、不敵で、それでいて楽しいことを目の前にした子どものようなキラキラした顔じゃないことだけは確かだ。
なんだろう? 恭介にしては珍しく、何か失敗でもしたんだろうか……?
謙吾「すまん、待ったか?」
しばらくして、謙吾が到着した。
胴着の上にジャンパーといういつもの格好で部屋に顔を出した謙吾は、
「うむ?」と首を捻った。
謙吾「鈴がいないようだが?」
理樹「今回は呼ばないんだって」
僕が答えると、謙吾は
「なるほど、道理で」と、何かに納得したように頷いた。
真人「なんだよ謙吾。
何がドーリーなんだ?」
謙吾「いやなに。お前達の部屋がいつもより広く感じられたのでな。一人いないだけでずいぶん違うものだ」
理樹「ああ。それはね、ちゃぶ台がないからだと思うよ」
僕が補足すると、謙吾はあらためて部屋を見渡した。
恭介「うおっ、本当だ。俺も今気付いた」
本来ちゃぶ台があるはずの場所に腰を下ろして漫画本を読んでいた恭介が声を上げる。
理樹「いやいや恭介、それ気付くの遅すぎだから……」
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