不安

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目的地のデパートに着くまでひたすら話し掛けるが、加奈は「うん」とか「そうだね」という簡単な相槌しかしない。 目も合わせてくんないし、合ったとしてもすぐに逸らされる。 嘆息を一つ。なんか俺だけ盛り上がってバカみてぇ。加奈、全然楽しそうじゃねぇし。あー、もう何話せば笑ってくれんだよ。 俺が頭を悩ませてると目的地のデパートに到着。休む暇もなく、加奈はエスカレーターに向かって進んで行く。 俺、居ても意味ないんじゃないか? だってそうだろ? もう加奈一人で行動してるようなモンじゃん、まるで最初から俺なんか居ないみたいにさ。 エスカレーターに乗らずにその背中を見詰める。溜め息をつくと同時に加奈がキョロキョロし始めた。 俺を見付けた加奈はオロオロし、両手は空中を彷徨ってる。 「は、ひゃる!」 名前言えてねぇじゃん。エスカレーターを上がって止まる加奈。また小さく溜め息を吐き出し、エスカレーターに乗った。
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