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うっかりベンチを壊してしまったがむしろそれはよかったのかもしれない。
立っていることで緊張していられるという面はある。
なにかたちどころに楽になる方法がなにかないものだろうか。
あれこれ考えている間に目の前にバスが停車した。
おかしいと思って時計を確認するとやはり30分なんてとても経ってはいなかった。
タカコちゃんはなんの疑問もないようでさっさと乗り込んで俺を待っている。
田舎の時間間隔はいい加減。
地元でもそうだったことを思い出して俺はバスに乗込んだ。
型の古いバスで、他に乗客はいない。
冷房が弱くてほっとする。
体を小さく折りたたみたくて窓側の座席へ体を押し込むとどういうわけか隣にタカコちゃんが座った。
これだけ席が空いているのになにを好き好んでうんこを我慢することに全力を注いでいる男に密着するのか。
確かに他に客がいない状況で離れて座るのも不自然だが、なにも隣じゃなくてもいいじゃないか。
「ここ狭くないですか? 後ろならゆったり座れるのに」
走り出したバスの中でタカコちゃんがそんなことを言う。
自分から狭いところへ来ておいてなにを言っているのかと思っていたらどうやら俺に対する質問らしい。
「あ、えーと好きなんだよ。この辺りの位置が」
「バスに酔いやすいとかですか?
さっきもちょっと顔色悪かったですもんね。
気分悪くなったら言ってくださいね」
なんだろう。ビニール袋でも常備しているのだろうか。
あいにく出そうなのは違うものだ。
ここで嘔吐したとする。
すると多分タカコちゃんは迷惑には感じるかもしれないが、軽蔑まではしないだろう。
しかしうんこをもらしたらどうだ。
迷惑に感じるうえに軽蔑するに決まっている。
なぜだ。
同じく汚物で体調不良が原因なのに。
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