2.うんこしたい

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 タカコちゃんはその後もなにか喋っていたが頭の中はうんこのことでいっぱいで聞いていられない。 ひたすら尻の肉を寄せて第二のかつやく筋にしようと奮闘していた。    一方で痛みも続く。 一体いつまで我慢すればいいのだろう。 いつになったら楽になれるんだろう。 一体俺がなにをしたというんだ。 一体なにをしたらお気に入りの子の横でうんこを我慢しなければいけないようなことになるんだ。    ふと窓の外に視線を奪われ、すぐに窓に張り付いた。    道路端に駄菓子屋が開いている。 平屋の屋根に大きなコーラの看板がありいかにも昔ながらといった風だ。 普段ならこんな所にこんな店があったのかとか、子供心を思い出し望郷に浸ることもできる。 しかし今俺が注目する点はひとつ。 あそこならトイレを借りられた。    へばりついている窓ガラスに爪をたてた。 涙を飲み込んだ腹がまるで雷雲にでもなったような音を出す。 肉食獣が獲物に喉を鳴らしているようにも聞こえて不安がかきたてられる。   「あー、あの店私がちいさい頃から変わらないんですよね。見る度に懐かしくなるんですよ」    タカコちゃんが解説してくれる。 店先に枝葉に包まれている妙なポストが見えた。  「過ぎちゃったら……戻れないんだ」 「え? 泣いてるんですか」    自分でも気がつかなかったが本当に泣いていた。   「なにか悲しいことがあったんですね」    タカコちゃんの勘違いが爆発している。 訂正している余裕がない。 さっきから肛門が引きつりそうだ。 中から大男にノックされているような、そんな風に錯覚してしまう。 いらっしゃいは言えない。 帰ってください。
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