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「好きです」
俺の目に信じられないものが飛び込んできた。
そうだ、忘れていたがこれがあった。
「私でよければ付き合ってください」
前方に見えているのは郊外によくある大型デパートだ。
家族連れがターゲットのはずのその施設にはトイレがわんさかある。
建物の前にバス停も見えた。
思わずガッツポーズが出る。
「喜んでくれるんですか?」
「ああ、もう駄目だとも思ったから。よかった、助かった」
腹の事情を知っているタカコちゃんも一緒に嬉しそうにしてくれている。
なんて良い子なんだろう。
彼女の恋人に選ばれる男は幸せだ。
タカコちゃんは手帳を出してなにか喋り始めた。
が、俺は幸せをかみ締めることで精一杯だ。
ああ、トイレに行けるだけのことがこんなにも嬉しいことだなんて思ったことはなかった。
今度からは綺麗に使うよ。
ウキウキしながらバスが一秒でも早くデパート前に止まるのを待つ。
こんな田舎なので特急指定なんてないから安心だ。
だが最後まで油断はできない。
こういうのは気が緩んでしまったらおしまいだ。
ここが正念場だ。
俺は新たな気持ちで肛門を閉め直し、近づくデパートを睨みつけた。
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