3.うんこしたい

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 バスを降りてからは波の連続だった。 ふらふらと進みながら時々立ち止まってこらえる。 いい具合だ。 どんどんデパートは近づいている。 タカコちゃんも気づかってそばにいてくれている。   「あ、あの。どうしたんですか?」    この子は今更なにを言うんだろう。   「どうしてここで降りたんです?  それにあの、ちゃんと返事を聞きたいんですけど」    なんだか話が噛み合わない。 俺の状態をわかってくれているならなぜバスを降りたかなんて簡単にわかるはずだ。   「えと、返事ってなんのこと?」 「なに言ってるんですか!」    タカコちゃんは信じられない、という風に怒り出した。 わけがわからない。 なんだか知らないけれど俺はそれどころじゃないんだが。    携帯電話が鳴った。 不平を言われているような気になって次から次にとうんざりした気持ちになる。   『あんちゃん!』    通話した途端、高音がわめいた。 やっぱりか。 きっと電話してくると思っていた。妹だ。   「なんだよ。 お前いい加減男に捨てられる度に騒ぐなよ。 せめて相手変えろ」 『ひどいよあんちゃん!  ……今時間大丈夫?』 「大丈夫だよ」    タカコちゃんがむっとした顔をした。  なんなんだこの子は。 ちょっとウザいな。    俺だって本当はそれどころじゃない。 だが妹の悩みは聞いてやりたかった。 馬鹿でも俺にはかわいい妹だ。    妹と話しながらデパートに近づく。 堪えながらなので歩みは遅い。 耳には妹自作の悲劇が流れ込んでいて、横には不満を隠さないタカコちゃんがいるが俺の頭の中は幸せでいっぱいだった。
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