4.うんこしたい

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「ちょっとあんたなにやってんの!」    呼びかけられたので振り向くと肥満体型のガードマンが二人、驚いた顔でこっちを見ていた。 俺は答える。   「うんこをしたい」    言いながらドアを蹴る。 ドアは天井まで繋がっていないのでよじ登れば入り込むスペースくらいはある。 早速そうしようと腕を伸ばすと、二人がかりではがいじめに捕まった。   「ちょっと、なにしてるの」 「だからうんこしたいんだって言ってるだろ!  お前らだって俺の気持ちわかるだろ?  もれそうになったことくらいあるだろ!  だから離せよ!」 「ここのトイレは使えないんだよ。 使用禁止って書いてあるだろ」 「水道の故障だろ?  便器さえあればいいから!  流れなくてもいいから!」 「いやよくないって。 トイレなら他にもあるから」 「あとで俺が掃除すればいいだろ!  もう待てない!」    トイレからずるずる引きずるように連れ出される。 外は思いの他騒ぎになっていて、ちょっとした人だかりができていた。 ガードマンに取り押さえられている俺は、大勢の前でどう見ても不審者以上だろう。    そんなことよりもうんこがしたい。 俺の願いはずっとそれだけだったのに、どうしてこんなことになってしまったんだろう。    人垣が割れて、その隙間を連行されていく。 人垣の中にタカコちゃんの姿があった。    ああ、もしかしてガードマンを呼んだのは彼女か。 とすると俺が不良にやられているところを見たということだろう。    まいった。これ以上ないくらいかっこ悪いところを見られた。 もう嫌だ。 肩で捕まえられている腕を曲げて顔を覆う。    急に下半身に涼しさを感じた。 見るとズボンが足首まで落ちている。 そうだった。 二度目にトイレに入った時点でベルトを外していたのを忘れていた。    連行されていく不審者に下半身下着というステータスが加わった。 すでに犯罪者だ。 人垣の中のタカコちゃんはもうこっちを見てはいない。    ガードマンに連れて行かれた先のスタッフ用のスペースでトイレを借り、思う存分脱糞しながら、少し泣いた。
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