インテ兄弟

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慎太郎 「お、お前… それを言うな。」 悠斗 「それを直さん限りはこの先は無いで。 こんなとこで振り回したらいつか刺さる。 それにこの車借りモンやろ?」 慎太郎 「何でそれが??」 悠斗 「何で?って、お前のセッティングちゃうもん。 お前のセッティングは多分、お前とお前の分身しか使えへんやろな。」 悠斗は何から何までお見通しのようだ… さすが、大学時代に一緒に走っただけある。 暇さえあれば榛名へ行き、腕を磨いていた。 一方がスランプになれば、一方が一緒になって、何でそうなったか原因を探し、解決していた。 慎太郎 「そうか…」 悠斗 「まぁ、まずはコーナーを直線的に走ることからやな。 いかに最短距離を走れるか、それによって立ち上がりのスピードも変わってくるし、タイヤへの影響も変わる。 だいたい、何年も走り屋やっとるのにそんな事もわからんのか??」 慎太郎 「それくらいはわかるし!」 悠斗 「じゃあ、何でせぇへんのや? そーゆーのをアホっちゅうんや。」 慎太郎 「うっさいな… 走りに集中しろよ!」 悠斗 「はいはい。」 悠斗はしゃべりながらでも、走りに抜かりは無かった。 完璧に近いベストライン、立ち上がりの高いスピード、すべてが完璧だった。  そりゃそーだ、コイツはプロレーサーだもんな… こんなことできて当たり前、ってか… 悠斗 「あ? 何か言うたか?」 慎太郎 「んや、何も。」 悠斗 「てか、ちゃんと見とるんかぁ? さっきからボーっとして。」 慎太郎 「してないし! ちゃんと見てるさ。」 慎太郎は、今の自分にはここまでの走りは無理だと、半ば放心状態だった。 言うは易く、行うは難し。こういうことを言うのかな。 つくづくそう思う慎太郎だった。
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