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准汰はやおら立ち上がると、帰ろう、とか細い声で言った。
雄大と涼子は頷く。
カジノバーのある雑居ビルを出ると日が照っていて、昼の歓楽街にも人が溢れていた。
雄大は青春ドラマのワンシーンのように、准汰と肩を組んで歩く。
涼子はその一歩後を静かについていった。
「まだマリちゃんとウド居るし、俺は病院に戻るけどジュンはどうする?」
「真っすぐ帰るわ」
「そっか。涼子ちゃんはどうするの? もしあれだったら、一緒に翔四季の見舞いにでも行く?」
「あっ、私は用事があるから、お見舞いはまた今度にしようかな」
「そっ。んじゃ、またね涼子ちゃん。ジュン、ちゃんと働けよ」
雄大は軽く手を挙げ言った。
「バイバイ、雄大君」
「三鎧さんとウドに宜しく言っといてくれ」
涼子は手を振り、准汰は雄大と同じように軽く手を挙げた。
二人は雄大の背中を見送る。
雄大と別れて、准汰と涼子は二人きりになった。
「涼子ちゃん、さっきは怒鳴ったりして御免ね」
「ううん、気にしないで。突然だったからビックリはしたけど――色々あったみたいだね」
「うん、ちょっとね。ねぇ涼子ちゃん、用事ってデート?」
「えっ、そんなんじゃないよ。だって彼氏居ないもん」
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