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翌朝、准汰はまた仕事を無断欠勤した。
昨夜からボロアパートの畳の上で涼子と二人寝そべっている。
准汰は一晩涼子と一緒に居ても、賢斗と翔四季のことが頭を離れず結局一睡もすることができないでいた。
「ねぇ、仕事いいの?」
「……なんか頑張る力が出ないんだ。もう、何もかもどうでもいいって感じ」
准汰は生気のない声で溜息混じりに言った。
「准汰君、ご飯食べようか。きっとお腹いっぱいにしたら元気出るよ」
涼子は明るく努めたが、准汰は溜息を吐くだけだった。
「なんか買ってくるね」
涼子は服を着ると、鞄からヴィトンの財布を取り出し出掛けて行った。
准汰は、もしも沙夜と出会うより先に、涼子と出会っていたらどうなっていたのだろうかと考えた。
だが予想できる答えは、結局涼子が妊娠するだけで、根本的には何も変わらないのだろう、という答えだった。
(俺、何やってんだろ……。こんなことしてる場合じゃないのに。身体が怠い。力が出ない。なんかダメ男だな……)
ただ、溜息しか出てこなかった。
准汰は起き上がると服を着た。
口許が煙草を恋しがり、無性に煙草が吸いたくなった。
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