別離

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しかし、准汰がどれだけ話し掛けても、返ってくるのは呼吸機の音だけだった。 「……何だよ、仕方ねぇな。俺が開けてやるよ」 准汰は翔四季の枕元に置いたコーラの缶を手に取ると蓋を開けた。 開けた瞬間、中身が勢いよく飛び出し、准汰の顔や衣類にコーラが飛び散る。 「お前がこうなる筈だったのに。……なぁ、笑えよ翔四季。可笑しいだろ?」 翔四季に異変が起きたのはこの直後だった。 翔四季のベッド横にある機械が突然鳴り始める。 「何だ、これ!? おい、どうした翔四季。何が起きたんだ? おい、しっかりしろよ」 准汰は翔四季の身体を揺すった。 「誰かっ! 誰か来てくれ!!」 異変に気付いた看護婦が二人病室に入ってくる。 入って来て早々、一人は医師を呼びにまた出て行く。 「何が起きてるんですか? 翔四季どうなっちまうんですか?」 准汰の問いに看護婦は答えなかった。 先程出て行った看護婦が医師を連れて戻ると、准汰は病室から追い出された。 ――翔四季はそのまま戻って来なかった。賢斗の後を追って行ったのだ。 准汰は一遍に色んなものを失い打ちのめされた。 准汰に気力はなく、もう立ち上がることができなかった――
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