第三章 闇(病み)

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時にカラオケに篭ったり、朝までクラブで踊り明かしたり、ナンパをした時もあれば、ビリヤードに興じた日もあった。 だが准汰が笑顔を見せることは一度もなかった。 准汰に“楽しい”という感覚は全くなかった。 日が経つにつれ、どんどんと准汰の精気は失せていった。働かない為、所持金もなくなっていく。 准汰は金銭的な問題から佳紀と雄大の誘いを断ることが増えたが、俺達が奢るから、と言って佳紀と雄大は諦めずに准汰を外へと誘い続けた。 しかし、それが准汰には重荷だった。働かない自分が他人のお金で遊びにだけ出掛けるのはどうなのか? 准汰は何度か奢られる内に、二人に対して強い劣等感を抱くようになった。 そもそも賢斗と翔四季が死んで悲しんでるのは二人も同じ。それでも佳紀と雄大は学校や仕事に行きいつもの生活を頑張って続けている。 それに比べ准汰自身は仕事を放り出し、いつまでも悲しみ、塞ぎ込んでいるだけの日々。 准汰は二人に対し、もう自分は対等ではない、と思ったのだ……。 准汰は佳紀と雄大から距離を取る決心をした。二人がやって来ても居留守を使い、完全に避けるようになった。 佳紀と雄大もそんな准汰に距離を感じ始め、やがて近付かなくなってしまう。 准汰はこれが自分で選んだ選択なのに、いざ二人が離れていくととても寂しく、強い孤独感に苛まれた。
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