第三章 闇(病み)

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食事は日に一回、紀美子と堺が寝たのを確認してから、夜中に冷蔵庫から適当な食材を取っては食べた。 引きこもり当初は絶食して、そのまま餓死して構わないと思った准汰だったが、四日間飲まず食わずしたところで我慢できなくなり音をあげていたのだった。 引きこもり生活で歯磨きの習慣もなくなった准汰の歯には、随分と虫歯が増えた。 掃除のされない部屋はゴミや埃で埋まり、悪臭が漂い始める。 准汰は部屋にゴキブリが出たところで微動だにしない。 (今の俺はゴキブリ以下さ……) 人を避け、このような引きこもり生活を続けることで、准汰の人間らしさが消えていった。また人間らしい生活が営めなくなった。 紀美子は数ヶ月も引きこもる准汰に、早く働きなさい、としか言わない。 時に紀美子は准汰の部屋に入ろうとしてみたのだが、鍵が掛かっている為に入ることができず。 准汰が引きこもってから堺は、准汰に対して攻撃的な態度を見せ始めた。 「今日も働いたから疲れた。誰かさんはずっと夏休みで気楽なもんだな」 堺は毎日准汰の部屋の前で、態と准汰に聞こえるような大きな声で言った。 堺の言葉は准汰にとって何よりも屈辱的だった。
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