第三章 闇(病み)

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引きこもり生活を続ける内に、准汰は外の声に敏感になっていた。 宅配や集金にやって来る人間の音や声。近所の子供や主婦達の話し声。 准汰は真っ暗な部屋の中でそれ等を息を潜めて聞いた。 「奥さん、知ってます? 高杉さんとこの准汰君、働きもしないで引きこもってるそうですよ」 「知ってますわ。一日中暗い部屋に篭ってるみたいで、気持ちが悪いですわね」 「その内に悪い事件でも起こすんじゃないかしら」 「悪い事件と言えば、何でも覚せい剤をやっていた友達を准汰君は見殺しにしたそうですよ」 「二人もでしょう。なんて薄情な子なのかしら、嫌ねー」 「それからお付き合いしてる彼女に子供を中絶させたらしいですわよ」 「まぁ、酷い。生命を何だと思ってるのかしら。全く女の敵ですわね。あんな子、早く死んでしまえばいいのに」 「それが世界の為ですわね」 「准汰なんて早く死ねばいい」 「早く死ね」 「死ね」 「死ね」 「死ね」 「お前にこの世で生きる価値はない。だから早く死ね」 准汰の被害妄想は酷くなり、幻聴が聞こえていた。 既に准汰の心は砕け、精神を病んでいたのだった――
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