兄弟

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(俺と沙夜の子供は誰にも祝福されなかったのに、何故あの男の子供は祝福され愛される? 生命の価値は皆等しい筈なのに、どうしてこうも違う? 結局子供が祝福されるか、されないかは親次第だということか? だとしたら俺は……俺は……) 「そうだよ、君は全く価値のない人間なんだよ。何よりも君の今までの行いが全てを物語っているじゃないか。紀美子は正しい。君が間違っていたんだよ。紀美子が言っていただろ? 君なんて産むんじゃなかった。宗一を引き取って育てるべきだった、と」 「止めろ! 止めてくれ。そんなことは言わないでくれ」 准汰は聞こえてくる幻聴に耳を塞いで言った。 「紀美子は君の所為で要らぬ苦労をしてきたんだ。唯でさえ君を産んで後悔しているのに、君の子供なんて面倒な物……」 「頼むから止めてくれ。それ以上は言わないでくれよ」 「大体君は覚せい剤が悪い物と知りながら、翔四季と賢斗を見捨てて見殺しにしたじゃないか。あの時、君が駆け付け……」 「言うな!! それ以上は言わないでくれ」 暗闇の中、准汰は叫ぶ。 「しかも涼子と浮気して、君は沙夜を裏切ったんだ。中絶をした沙夜がどんな気持ちでいたか君に分かるのかい? 沙夜の痛みが君に分かるのかい?」 「五月蝿い……五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い!」
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