兄弟

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「パパ、ボク優花ちゃんみたいにうまれてきたかったのに、どうしてボクを殺したの? どうしてママをなかせたの?」 「ジュン、どうして俺達を助けてくれなかったんだ? 俺達、親友だろ? 俺も賢斗も本当は覚せい剤なんて止めたかったのに、どうして見捨てた?」 「ねぇ、私お腹が痛い。痛くて痛くて堪らないの。これも全部あんたの所為ね。あんたなんて死んじゃってよ。消えちゃってよ!!」 顔のぼやけた赤ん坊、青白い顔の翔四季と賢斗、怒り悲しむ沙夜の顔――それ等が幻聴と共に准汰の脳裏に次々と浮かぶ。 「……許してくれ、頼むからもう許してくれ。俺が悪かったから、お願いだから、お願いだから許してくれ」 准汰は聞こえてくる幻聴に涙しながら土下座した。何度も何度も、許してくれ、と請う。 「准汰、居るのか? どうかしたのか?」 突然、ノックの音と共に聞こえてきたのは宗一の声だった。途端に准汰は我にかえる。 「さっき着いたんだけど、お土産持ってきたから、良かったら顔を見せてくれないか?」 准汰は涙を拭くと息を潜め闇と同化した。 「ダメよ、宗一。准汰、風邪ひいてるみたいだから、優花にも移るといけないし近寄っちゃダメよ」 紀美子は言った。 「そうなの? なんか随分と大きな声がしたから気になったんだけど」
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