悲しい殺意

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手にしたバタフライナイフは翔四季の物とお揃いで、准汰の十五歳の誕生日に翔四季がプレゼントした物だった。 貰った当初は准汰も護身用としてこのバタフライナイフを持ち歩いていたのだが、その当時付き合った彼女が不安がったので、准汰はすぐにバタフライナイフを持ち歩くのを止めていた。 准汰はバタフライナイフを喉元に突き付けたままで深呼吸を数回繰り返す。 そして覚悟を決めると心の中でカウントを数える。 (壱……弐……) 准汰に躊躇いがあった。手先が震え、身体全体が震え、准汰の歯がカチカチと音を立てる。いざ自殺しようとすると准汰は死ぬのが恐かった。 「チキショー!!」 准汰は壁に向かってバタフライナイフを投げ付けた。 (どうして、どうして俺はまともに生きることも死ぬこともできないんだ。クソッたれ、この根性無しが) 准汰は惨めだった。どうして自分は頑張れないのか。どうして働けないのか。生きることに希望を持てず、死ぬ勇気もない。 ただ怠けてるだけなのか、それとも頭が変になってしまったのか説明がつかない。 “精神病” 准汰はその可能性も考えたが、それを認めたくはなかった……。 准汰は成人式には行かなかった。この日、友人達が再会を喜び、騒ぎ、酒を飲み明かしているのに対し、准汰は闇の中で愚かな自分を一日中嘆いていたのだった。
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