悲しい殺意

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成人の日から二ヶ月弱。冬が終わり、桜の開花が発表され、陽気な天気が続いていた。 春を迎え准汰の心の闇は益々深くなっていた。准汰の死にたいという気持ちは変わらず――だが自殺には踏み切れず。そうやって燻っている内に、“死にたい”気持ちが“殺したい”狂気へと変わっていく。 准汰は自分で死ぬ勇気も根性もないのであれば、誰かを殺し、殺人犯となり、死刑を望むようになったのだ。 准汰は日々妄想した。登下校の小学生を殺す自分。仕事帰りのOLを殺す自分。中年のサラリーマンも女子高生も――暴走族も殺してみた。 バタフライナイフを手にした血塗れの自分。 表情のない青ざめた顔。 騒ぐマスコミ、傍観する視聴者。 誰かの泣く姿……。 准汰は自分が恐かった。こんなことばかり考える自分はやはり頭が変なのだと思った。 何とかしなければ、自分は本当に人を殺してしまうのではないか? でも、どうしていいのか分からない。 (クソッ! 俺はどうしちまったんだ……。やっぱり精神病なんだろうか? だとすると病院に行くべきなのか……?) 准汰は愚かしい自分をどう受け止めていいのか分からなかった。 そしてこんな自分が悲しかった。
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