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「だから、お前はどこの誰かって聞いてんだよ。これでもまだ意味が分かんねぇか?」
堺は考えてみたが、やはり准汰の言葉の意図が分からず答えられなかった。
「俺はな、お前のこと何も知らねぇんだよ。下の名前が何て言うのか、歳は幾つなのか。誕生日は、血液型は――家族構成、出身地、仕事は何をしてる? 何年も一つ屋根の下で暮らしてて、ただ堺という名字しか知らねぇ。こんなの可笑しいだろ?」
「そ、そんな、今になって……」
「黙れ、クズ! 俺のこと散々無視しやがって、部屋に篭った途端ねちねち言いやがって」
「許してくれ、殺さないでくれ」
命乞いする堺の腰が抜ける。
「うるせー! お前等、二人して邪魔物の俺を殺すつもりなんだろ? お荷物な俺を消すつもりなんだろ? そうはさせるか、させるもんか!!」
准汰はテーブルをひっくり返すと堺との距離を一気に縮め、尻餅をつく堺の頭に蹴りを入れた。
そして准汰は堺に馬乗りになるとバタフライナイフを振りかざす。
「准汰、止めて」
紀美子は絶叫する。
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