悲しい殺意

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「うわー!!」 准汰は大声で叫ぶと無我夢中で自分の部屋まで走った。 (頭が変だ……俺の頭はイカレてる。この手で人を殺そうとした。どうかしてる、どうかしてる) 身体の震えが止まらない。 (うう……止まれ、止まれ) 両腕を抱え必死に身体を押さえ付けるも准汰の身体は震え続けた。 (どうしよう、どうしよう、どうしよう) 混乱していく中、再び闇が准汰を飲み込もうとする。 「准汰……」 紀美子は部屋に入ると明かりを点けた。准汰は気が動転していて、鍵どころか部屋のドアすら閉めていなかったのだ。 准汰の部屋は足の踏み場もない程に散らかっていた。埃っぽく、悪臭が充満し、とても人が暮らしている部屋とは思えなかった。 紀美子はこの部屋の惨状に改めて准汰の抱える問題の重さを知る。 「……俺を殺せよ。俺はイカレてんだ。だから殺してくれよ」 「何言ってるんだい。そんなことできる訳ないでしょ」 「だったら警察にでも突き出してくれ」 「……准汰、御免よ。何もかもアタシが悪かったんだね。こんなになっちまって……アタシが本当に悪かったよ」 紀美子は再び啜り泣く。
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