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「それは違う、おふくろが悪い訳じゃない。全部、俺が悪いんだ。だから謝らないでくれ」
「でも、アンタ……」
「確かにおふくろのこと憎んでるけど――でも違う。上手く言えないけど、とにかく悪いのは俺で、俺の責任なんだ」
「准汰……」
「もう一人にしてくれ。頼むから出てってくれ」
紀美子はどうしていいのか分からず、そのまま准汰を置いて一人部屋を出た。
とぼとぼと居間に戻ると、ひっくり返ったテーブルを戻す。
「じょ、冗談じゃない。俺は出て行くぞ」
堺は紀美子に告げると二階に上がり、簡単に荷物を纏めるとそそくさと出て行ってしまった。
紀美子は一人居間に残され立ち尽くす。
今まで自分がしてきたことは何だったのか……。
紀美子は自問自答してみる――しかし、答え等どこにも見当たらなかった。
准汰の凶行と心の闇。
そして愛した男、堺との別れ。
この日、紀美子の目が乾くことはなかった。
高杉家の夜はまだまだ明けない。
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