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助けてほしい、と准汰は心に思うも、それを口にしてはいけないと思った。引きこもりの自分にはそんな価値がない気がしたからだ。
また准汰には依然として死にたい願望があった。それは病的な願望でもあった。
できることなら死にたい。今すぐにでも死にたい。もし安楽死という選択が容易に選べる世界ならば准汰は躊躇うことなくそれを選ぶだろう――。
「例えば、どこか痛いところはありますか?」
広嶋の問い掛けに准汰は首を横に振って答えた。
「そうですか。じゃあ、睡眠はどうですか? 夜は眠れますか?」
准汰は再び首を横に振る。
「食欲は? ちゃんと毎日食べられますか?」
やはり首を横に振る准汰。
「お母さん、彼は随分と痩せていますが、元々こんなに痩せていたんですか?」
「いえ、確かに小さい頃から細い子でしたが、ここまで酷くはなかったです」
広嶋の問いに紀美子は答えた。
「あの先生、少しいいですか?」
「どうぞ、お母さん」
「実は一年ちょっと前の話なんですが、この子がお付き合いしていた彼女が妊娠しまして、私がそれを反対したもので……」
紀美子はこれまでの経緯を包み隠さず広嶋に話し始めた。
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