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准汰が自分の病名を知ったのは通院して暫くのことだった。直接、広嶋から病名を告げられることはなく、カルテに書かれているのを見て准汰は知ったのだ。
“うつ病”
それがどんな病気なのか准汰には見当も付かなかった。
ただ、病名を知ることで安心もしていた。
様々な別れを経験し狂い出した思考と行動。それがただの甘えなのか、または病気なのか、判断の付かない現状にとにかく説明が欲しかった。
自分が精神の――心の病を患っているということには大きなショックがある。それはまるで“人間失格”の烙印を押されてしまったかのような気分である。
風邪とは違って人に気楽に話せる病気でもない。精神科に受診していると知られようものなら、人々の目も冷ややかである。
精神病イコール気違い、という偏見や差別もまだまだ多い社会。
准汰は病気であることの安心と苦しさの両極の間で常に揺れ動いていた。
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